2026年天皇賞(春)回想|クロワデュノールが示した王者の風格と12番人気の激走

投稿: 2026年05月03日 17:05最終更新: 2026年05月03日 17:05...

2026年5月3日、京都競馬場で行われた第173回天皇賞(春)は、競馬ファンの記憶に深く刻まれる一戦となりました。主役を演じたのは、1番人気に支持された4歳馬クロワデュノール。日本ダービー馬としての誇りを胸に、初めて挑む3200mの舞台で見事にその資質を証明しました。

レースは、長距離GⅠらしい駆け引きがありながらも、終わってみれば上位人気勢の地力と、一頭の伏兵による猛追が光る結果となりました。2着には12番人気のヴェルテンベルクが飛び込み、馬連1万8240円、3連単7万630円という中波乱を演出。平穏な決着かと思われた直線で、淀の観衆をどよめかせました。

北村友一騎手と斉藤崇史調教師にとっては、これが嬉しい天皇賞(春)初制覇。世代最強の座を不動のものとしたクロワデュノールの走りを中心に、この一戦を振り返っていきましょう。

スローペースからの瞬発力勝負となった展開

15頭が揃ったスタート後、先陣を切ったのはミステリーウェイやサンライズソレイユといった先行勢でした。1000m通過は59.9秒前後と、長距離戦としては平均からややスロー寄りの流れ。京都の長い向正面でも隊列に大きな乱れはなく、淡々としたラップが刻まれました。

このペースの中で、断然人気のクロワデュノールは中団前方、3〜6番手という絶好の位置をキープします。スタミナへの不安を囁く声もありましたが、鞍上の北村友一騎手は馬をなだめ、折り合いは完璧に見えました。対照的に、後方で脚を溜めていたのが12番人気のヴェルテンベルクです。

勝負が動いたのは3コーナーの坂。じわじわと加速が始まり、ラスト4F(800m)からは47.1秒、3F(600m)は35.4秒という持続的なラップへ突入しました。京都3200m特有の「前が止まらないようで、最後に足色が鈍る」極限のスタミナ勝負ではなく、後半の立ち回りと末脚の切れ味が要求される展開へとシフトしていきました。

クロワデュノールが示した「ダービー馬」の底力

直線に向くと、クロワデュノールが満を持して先頭集団を射程圏に入れます。坂を下って勢いをつけたまま馬場の真ん中から力強く抜け出し、残り200mで先頭へ。懸念されていた3200mの距離も、父キタサンブラック譲りの豊かなスタミナと、大阪杯でも見せた高い総合力でねじ伏せた形です。

クロワデュノールはこれまでにホープフルS、東京スポーツ杯2歳S、そして日本ダービーを制してきたエリートです。さらにフランス遠征での重賞挑戦や大阪杯制覇を経て、この天皇賞(春)でも勝利を挙げたことで、名実ともに現役最強クラスの地位を確立しました。通算重賞勝利数はこれで6勝。4歳春にして「長距離の盾」を手中に収めたことは、今後の凱旋門賞挑戦やジャパンカップ、有馬記念に向けても大きな弾みとなりました。

何より特筆すべきは、上がり34.9秒というタイムです。先行気味のポジションからこの脚を使われては、後続は手も足も出ません。北村友一騎手との息の合ったコンビネーションは、まさに人馬一体と呼ぶにふさわしいものでした。

波乱を呼んだヴェルテンベルクと武豊騎手の老獪な騎乗

クロワデュノールが押し切りを図る中、大外から一気に差を詰めてきたのがヴェルテンベルクでした。道中は後方で死んだふりに徹し、直線だけで他馬をごぼう抜きにする末脚を披露。上がり最速となる34.3秒を記録し、クロワデュノールをハナ差まで追い詰めたところでゴールとなりました。

12番人気という低評価を覆した背景には、松若風馬騎手の思い切った騎乗と、スローペースで溜まった脚を一気に解放できる展開の利がありました。重賞実績こそ控えめでしたが、長距離特有の「緩むラップ」がこの馬の適性に合致したと言えるでしょう。

また、3着には2番人気のアドマイヤテラが食い込みました。鞍上の武豊騎手は、前走の阪神大賞典で見せた粘り腰を信じ、好位からロスのない競馬を展開。惜しくも上位2頭には届きませんでしたが、ステイヤーとしての高い安定感を示しました。レジェンド武豊騎手の「淀での長距離戦」における技術が光り、上位人気に応える形となりました。

2026年天皇賞(春)の回想から見る今後の展望

このレースの結果を総括すると、以下の3点が重要なポイントとして浮かび上がります。

  • 4歳世代のレベルの高さ:ダービー馬クロワデュノールが古馬長距離戦を制したことで、現4歳世代の層の厚さが改めて証明された。
  • 血統適性の重要性:父キタサンブラックが果たした春・秋天皇賞制覇と同じく、その血を引くクロワデュノールが盾を制したことは、血統的なドラマを感じさせた。
  • 展開による穴馬の台頭:スローペースからの瞬発力勝負になることで、実績不足の馬でも上がり時計さえあれば上位に食い込める「京都3200m」の特性が改めて示された。

前年覇者のヘデントールはルメール騎手を背に挑みましたが、今回は5着。スローペースからの加速タイミングが合わず、自慢の持続力が発揮しきれない不完全燃焼のレースとなりました。しかし、長距離適性自体は依然として高く、次走以降の巻き返しが期待されます。

クロワデュノールはこの勝利により、春の宝塚記念、あるいは秋の古馬三冠路線を見据えることになります。3200mを克服したことで、もはや死角はないと言っても過言ではありません。2026年の競馬シーンは、この「絶対王者」を中心に回っていくことになるでしょう。

うまぴっく編集者の眼:
天皇賞(春)はラスト1000mからのスタミナと持続力の勝負になりやすく、今回クロワデュノールが中団から早めに動いて押し切った内容は、まさに父譲りの心肺機能の証明と言えます。前半のスローで脚を溜められたことが、ダービー馬の瞬発力を長距離戦でも損なわせなかった最大の要因でしょう。
※本見解は著書『競馬を読むラップ分析』の分析ロジックに基づいています。

2026年天皇賞(春)の回想まとめ:新たなステイヤーの誕生

2026年の天皇賞(春)は、1番人気のクロワデュノールが期待に応えるとともに、長距離戦の新たな王者として名乗りを上げたレースでした。北村友一騎手と斉藤崇史調教師のコンビによる初戴冠、そして12番人気ヴェルテンベルクの激走。淀のターフには、喜びと驚きが同居していました。

今回見せたクロワデュノールの勝ちっぷりは、単なるスタミナ自慢ではなく、中距離で培った機動力と瞬発力を長距離でも発揮できるという「現代ステイヤー」の完成形を感じさせました。また、アドマイヤテラやヘデントールといった実力馬たちも今後の長距離路線を盛り上げてくれることは間違いありません。

今回の回想を通じて、長距離戦における「格」と「適性」、そして「展開」の妙を改めて再認識する一戦となりました。この記憶を糧に、次なる大舞台での彼らの活躍を追い続けたいと思います。